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数字は嘘をつかないが、嘘つきは数字を使う がわかるブログ

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よく見かける意識調査のニュースの読み方を学ぼう。

2019年6月3日 産経新聞の記事より引用

少し前に発表されました、ニュース記事です。日本人のうち韓国へ親しみを感じていない人が60%以上もいたぞ!という話です。日本の人口から考えれば、韓国全体の人口以上の人間が、そもそも韓国なんて嫌いなんだよ!というイメージがこのニュースの「見出し」から伝わってきます。おおよそ産経新聞社の読者層には、斯様な書きぶりの方がウケもよいでしょうし、webのアクセス数も稼げるでしょう。韓国と仲良くしている風の記事はそもそも人気がありませんので。

さて、個人が勝手に読む分には一向にかまわないのですが、ビジネスにかかわる者が、この情報をざっくりそのまま受け入れること自体が、リテラシーがとても低く、危険な行為でもあることを、このブログでご理解いただきたいと思いまして、筆を執りました。

調査結果のニュースが真実を伝えたことなんか無い

新聞が露出した情報のネタ元を調べて調査概要を知る

どこぞで聞いたことがある言葉。「数字は嘘をつかないが、嘘つきは数字を使う」 この言葉の意味合いが、今回のようなニュース情報を解析することで見えてきます。

内閣府の「外交に関する世論調査」より

ニュースを見ましたら、まずその調査がどこの誰がいつ行ったものであるか?を調べましょう。そして調査概要がきちんとつまびらかに公開されているのか?どうかも、ニュース情報の信ぴょう性判断の材料となります。

わかったことが2つありました。
1)このニュースは内閣府の調査がネタ元です。しかし、よくよく見てみると割合がアウトプットになっており、実数が全く分かりません。そもそもこういう情報自体はかなり胡散臭いですが。。。いったんは進めます。

2)単純集計とクロス集計の両方の情報が出ている。単純集計とは、アンケート調査によって収集した回答データを、設問ごとに集計するもので、文字通り単純表記されています。一方で、アンケート調査によって収集した回答データを、設問をかけ合せて集計することを「クロス集計」といいます。

今回のクロス集計の因子は年代です。若年層から中年層、壮年層で、韓国への親しみ度合いにブレがあることが、グラフからも読み取れます。当然だとは思いますが。。。

 

割合の表示は、基本的に胡散臭い。実数で考える癖をつけよう

今回の数値はクロス集計も含めてすべて割合しか表記がありません。割合が出てきたら、ほぼ何らかの意図(強調したい・隠したい)を感じた方がよいです。筆者もそれを感じましたので実数を使って戻しました。

ここで大切なのは、ニュースに世代間ギャップが謳われており、若年層ほど親しみを感じる人間が多いという記載があった点への裏読みです。筆者は、この情報のベースにあるアンケート調査の母集団が世代間で同数ではない(年代が高い層が多いのでは?)という疑念を持ちました。その疑念を確認するために、クロス集計で分けられた6つのセグメントに対し、同数のサンプル数が存在しているという仮定で実数を設定しました。

すなわち6セグメント層の調査対象人数がそれぞれ100名ずつであるという仮説です。

仮説に基づく実数の合計値から、先ほどのニュースの冒頭にあった単純集計の数値を自動的に計算することができますよね。この仮説に基づく数値と、ニュースの冒頭にあった単純集計の数値にずれがあった場合に以下のことが言えます。

☆韓国に親しみを感じる人の割合(数値)が
仮説に基づく割合>ニュースの割合 :本調査のサンプルは高年齢の人が相対的に多い
仮説に基づく割合<ニュースの割合 :本調査のサンプルは若年層の人が相対的に多い

ということになります。結果はどうだったか?というと。。

と、ニュースで出た調査の割合の数値の方が低いことが分かりました。筆者としてはこういうときに①~③の場合分け仮説に基づいて考察をするのですが、まぁ実績等から考えてみると、①はまず無いでしょう。本調査は対韓国だけではなく複数の国の印象を尋ねています。逆に韓国だけを意識的に数値を動かす意味もないでしょうし。単に母集団を均等に集めていないか、集めることをあまり主眼においていない。とも考えられます。

また③も可能性は乏しく、内閣府のような役所の人材スペックが低いとも考えられず、調査はできうる限り目的意識と公平性を担保して実施しているでしょう。

 

となると、②を疑うわけです。メディアの発信する情報が信用できない云々は、感情論で言う話ではなく、このように毎回のニュースをベースにロジカルに繙いていくことをお勧めしています。

 

計算というエッセンスが入った瞬間から、数字は嘘をつき始める

伊藤敦夫[いとう・あつお](ジャーナリスト、政治評論家、1948~)氏がTBS番組『ひるおび!』(2019年6月)にて紹介した言葉

伊藤敦夫氏がテレビで「数字は嘘をつかないが、嘘つきは数字を使う」と発言して、注目を集めましたが、厳密に分析すると、この言葉の前半に使われている「数字」と後半に使われている「数字」は意味が異なります。

 

最初の「数字」とはデータ、すなわち実数です。よく生データなどと表現されますが、換言すると「計算で導き出された数値ではなく、測定で得られた数値」と言えます。(もちろん測定方法に、意図的な要素が入るケースもあるので、そこは別途注意を払う必要がありますが)

 

他方で、後半の「数字」とは、計算や解析によって導き出された数字…というか「数値」を現します。かつて、トム・ソーヤの冒険を書いたマーク・トウェインは「私はしばしば数字に惑わされる。自分自身に当てはめる場合はなおさらだ。ディズレイリの言葉「嘘には三種類ある:嘘、まっかな嘘、そして統計」が正当性と説得力をもって通用してしまうんだ。」と言ったそうです。「そして統計」…結構有名なフレーズです。

 

●昨年に比べて○%上昇し…

●日本人の○人に1人が、今回のことについて…

●今回出た量は、東京ドーム○杯分に相当し…

 

こんなフレーズが出たら要注意です。嘘くさい・胡散臭いと思いながら聞いた方がいいです。そして分かりやすく伝えてくれているという配慮ではなく、明らかに印象操作をしようとしている「発信者の意図」や「発信者の感情」がここに込められているのです。なぜでしょう??

 

「データ」と「情報」には天と地ほどの違いがあります。

理由は簡単。「数字は嘘をつかないが、嘘つきは数字を使う」とは、「データは嘘をつかないが、嘘つきは情報を使う」と読み替えればよいのです。実は情報には定義があります。

データ・事実に、「発信者の意図」と「発信者の感情」を加えたものを「情報」というからです。よくよく考えたら、あなたも心当たりありませんか?写真撮影で見せたくないところを意図的にフレームから外したり、美白効果でシミを消したり、成績の報告をテストの紙面ではなく、口頭で順番に伝えようとしたり、あいつムカつくと思って、一生懸命 デマや噂を流したり…

流されたものを「情報」というのです。正誤などは関係ありません。誤報だって世の中たくさん存在しますし、フェイクニュースなんてその最たる例です。

でも。
世の中は「データ操作」は認めません。「操作」ではなく「改ざん」だからです。でも「情報操作」「印象操作」などは日常茶飯事です。場合によっては「ブランディング」「広報戦略」などとポジティブな表現にすり替わっていることだってあります。

昭和の時代に比べて、人ひとりが得られる情報は500倍以上になったと言われています。それゆえに読み手一人一人にメディアリテラシーや数値に関する能力を問われる時代になりました。

そしてもちろん、読者のあなたはこのブログの内容だって、疑って読んでくださいね。アジアフューチャー株式会社が発信している「情報」ですから。どこかに当社の意図と感情が込められている(かもしれません)。

 


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